「お先に失礼します」

「お疲れ様！千早ちゃん」

「あ、千早ちゃん！ちょっと待って！」

「どうしたの？萩原さん」

「えっと…急で悪いんだけど、今日千早ちゃんのトコに泊まりに行って良いかな」

「…？別に構わないけれど、真は？」

「………真ちゃんなんて知らないもん」

「……………はぁ。なるほど、真と喧嘩して今日は会いたくないということね」

「うん…ごめんね」

「良いわ。すぐ出られる？一緒に帰りましょうか」

「うん！ちょっと待ってて！」

・・・

「お夕飯どうしようかな。萩原さん、何か食べたいものある？」

「あ、じゃあ私作っても良い？千早ちゃんの口に合うか分からないけど、お礼の意味も込めてってことで」

「そう？じゃあお願いするわ」

「一応考えてるのは、和風のパスタに、コーンスープ、あとサラダかな。嫌いなものとかある？」

「特に無いわ。じゃあスーパーに寄って帰りましょうか。あ、キャベツとトマトは家に余りがあるから、買わなくて良いわ」

「分かった！じゃあレッツゴー！」

・・・

「ご馳走様でした」

「お粗末様でした」

「おいしかったわ。萩原さん、お料理上手なのね」

「えへへ。千早ちゃんに喜んでもらえて良かったよ。でもちょっと手伝ってもらっちゃったけどね」

「私はパスタ茹でるのと、サラダを盛り付けるのしかやってないわ。春香と料理する時もこんな感じだし」

「そうなんだ」

「えぇ。材料を良い大きさに刻んだり、炒めたり味付けを加えたり、そういったコアな部分は春香がやってくれるの
　私はその間に出来ることをやる感じ。ちょっとずつ教えてもらってるけど、まだまだ春香や萩原さんには敵わないわ」

「ふふっ。私はともかく、春香ちゃんは、自分より千早ちゃんの方が料理上手くなって欲しくないんじゃないかな」

「どうして？」

「休憩時間にね、春香ちゃん、お料理の本を眺めながら言ってたの。『千早ちゃん、お料理の飲み込みが早すぎるぅ〜』
　『自分で作った方がマシって言われたらどうしよう』ってね」

「春香がそんなことを…」

「うん。じゃあ一緒に作るの控えたら？って言ったらね、『それはダメ！千早ちゃんと一緒の方が絶対おいしく作れるもん！』だって」

「ふふっ、春香らしいわね。さて、片付けしましょうか」

「あ、お皿洗うのは私やるよ」

「そう？じゃあその間にお風呂沸かしてくるわね」

「うん！」

・・・

「ふぅ、いいお湯だった。あら？」

『幼い頃の小さなページ　誰もが夢見てる今も〜♪』

「これは…」

「あ、千早ちゃん。これね、再放送なんだけど、前に春香ちゃんと真ちゃんの3人で出たやつなんだ」

「あの時のやつね。萩原さん、リーダーになって頑張ってるわね。素敵よ」

「えへへ、ありがと」

「春香も真も良いフォローが出来てるわね。素晴らしいステージだわ」

「うん。真ちゃん・・・格好良いなぁ・・・ｸﾞｽﾝ」

「萩原さん？」

「え？あ？ううん？何でも…ないの…。な・・あれ？何で涙が…」

（ｷﾞｭｯ
「もう寝ましょうか。私、疲れちゃったみたい」

「ｸﾞｽﾝ…うん。ありがとう、千早ちゃん」


「電気消すわね」

「うん」
ｶﾁｯ
「ふふっ、こうやって千早ちゃんの隣で寝るの、初めてだね」

「そうね」

「あの…さっきはごめんね、急に泣いちゃって…」

「何の話かしら。私は何も見てないわ」

「ｴﾍﾍ…千早ちゃん優しい・・・ねぇ、千早ちゃん？」

「なーに？」

「千早ちゃんは、春香ちゃんとのことで、不安になることとか無いの？」

「どうして？」

「春香ちゃんって、誰にでも優しいじゃない？だからこうしている間に誰か別の人とーとか考えたりとか…」

「春香が皆に優しいっていうのは、今に始まったことじゃないし、それが無くなったら春香が春香じゃなくなってしまう気がするの
　私のことが一番好きって言ってくれた春香の言葉をずっと信じてるし、私のことをこれだけ好んでくれてる中で、それ以上の人が
　現れたなら、それはそれで仕方ないとも思っているわ」

「千早ちゃん…」

「でも、色んな人と楽しそうに話す姿を見てると、ちょっと嫉妬とかはしちゃうけどね。
　やっぱり、私自身は春香のことが大好きだから…」

「春香ちゃん、愛されてるんだね。羨ましいな。私と真ちゃんも…」

「・・・実はね、真、今日春香の家に泊まっているのよ」

「えっ！？本当に？」

「えぇ。ちょっと落ち込んでたって言ってたわ。でも春香がいるし、上手くやってくれると思う」

「うぅ…なんか悪いことしちゃったな。私が焼きもち焼いちゃったばっかりに…」

「嫉妬するのは相手のことが好きな証でもあるから、ほどほどにしておけば悪いことじゃないと思うわ。
　ただ萩原さんと真が仲悪いままだと、私たちも悲しいわ。だから、仲直りしてね」

「うん！ありがとう、千早ちゃん」

「じゃあお話はこれくらいにして、寝ましょうか]

「うん。おやすみ、千早ちゃん（ｷﾞｭｯ」

「もう…。おやすみなさい、萩原さん」