◆見つめて 「で、ここがこうなって…」 「うん。じゃあこういうのはどうかな?」 「それでも解けるんだけど、こっちの方が簡単だし分かり易いと思うわ 「なるほど・・・」 只今千早ちゃんちで勉強中 苦手な数学を教えてくれる千早ちゃん優しい これは大事なところねって千早ちゃんが鉛筆で薄く星を書く。 赤いペンが欲しいなー。あったっけ。 「はい、春香」 「あ、ありがと」 千早ちゃんから差し出されたのは、赤色のペン。 声に出ちゃってたのかな。まぁ良いや。 自分のノートに赤で重要!って書いておく。 それからも教えてもらいつつ、問題を解いていく私。 でもちょっと喉乾いちゃったな… 「じゃ、この問題を解いてみて」 「うん、やってみる」 いけないいけない。集中集中。 千早ちゃんが教えてくれた通りにすれば・・・こうやって………解けた! 「千早ちゃん、出来た!」 「そう、じゃあちょっと休憩にしましょうか。カルピス作ってきたわ」 「やった!丁度喉渇いてたんだ。嬉しい」 乾いた喉に氷がいっぱい入ったカルピスを流し込む うーん、おいしい! それにしても・・・ 「あの、千早ちゃん」 「なに?」 ストローをくわえながら、上目遣いで私の方を見つめる千早ちゃん可愛い。 じゃなくて… 「なんで千早ちゃん、私の思ったこと分かるの?」 「へ?」 「あ、いや…。赤いペン欲しいなーって思ったら赤いペンくれたし、喉渇いたなーって思ったらカルピスくれたし…」 千早ちゃんの目はぱちくりしてる。 急にこんなこと言い出せば当然だよね。 「私は千早ちゃんの思ってること、まだ分からないことが多いのに、千早ちゃんは私の思ってること丸分かりなんだもん。  何か悔しいなーって思っちゃって」 ストローでチューってカルピス飲みながら、千早ちゃんの答えを待つ私。 すると千早ちゃんはふふって笑い出した 「な、何がおかしいの?」 「ご、ごめんなさい。そんな風に考えてるなんて思わなくて。でも、ふふふっ!」 「もう!笑いすぎだよぉ!」 「春香ってば、ふふっ。あはは」 「もう、千早ちゃんったら知らない!」 ぷいって顔を背ける私。 知らないなんて言っておきながら、千早ちゃんがいないと何も出来ないのは分かってるけど。 ちょっとくらい、いじわるしても良いよね。 すると千早ちゃんが後ろからそっと、私を抱きしめてきた。 千早ちゃんのドキドキが聴こえる。私のドキドキは聴こえないかな…。 「私ね、春香のことずっと見てるの。多分、あなたが思っている以上にずっと」 後ろから優しく語り掛けてくれる千早ちゃん。 やっぱりずるいな…。そんなこと言われたら、私…。 「あなたを見てるとね、心が温かくなるの。仕草の一つ一つに元気を貰えるって言うのかな…。  笑った顔、泣いた顔、怒ってる顔、焦ってる顔、いろんな表情を見せてくれる春香を、ずっと見ていたい…」 「千早ちゃん・・・」 なんか…恥ずかしいな…えへへ。 顔が赤くなってるのが自分でも分かる。 私は後ろから廻されてる千早ちゃんの手をギュッと握った。 「私も…千早ちゃんのことを、もっともっと知らなくちゃだね…」 顔は見えないけど、千早ちゃんが微笑んだのが分かる。 ちょっとずつ、ちょっとずつでも、理解していくんだ。 「さあ、続きをやりましょうか」 「うん!」 私のことを見守ってくれる、アナタのことを…。 END