ガチャ 「ただいまー」 玄関のドアを開け、靴を脱いでいると、正面のドアがゆっくりと開いた 「お帰りなさい、千早」 「ただいま、閣下」 春香そっくりの顔の女性が私を迎えてくれる 「今日は遅かったのね」 「えぇ。収録が長引いてしまって…」 「そう」 スッ 閣下がそっと私に抱きついてくる 「どうしたの、閣下?」 「いつもより遅いから、心配しちゃったわ」 「ごめんなさい、連絡するタイミングが無くて…」 「良いのよ。アナタが無事に帰ってきてくれれば」 「閣下…」 私は閣下を抱きしめ、頭をゆっくりと撫でた 閣下は気持ち良さそうに目を伏せている すると、真正面のドアが再び開いた 「千早ちゃん、おかえりー!」 春香が元気な声で私を迎えてくれた が、抱き合ってる私たちを見て、春香は驚きの声を上げる 「あー!閣下ちゃんなにやってるの!」 「何って、千早分を補充してるのよ」 「ずるいー。私も補充したいよ〜」 「こういうのは早いもの勝ちなのよ」 「ぶー」 頬を膨らましている春香はすごく可愛い 閣下も分かってやってるに違いない 真正面から抱かれていた閣下が、ちょっと位置をずらした 下を向くと、私は閣下と目が合った 閣下は、小さくウィンクをする 何となく分かったので、私は閣下を左手で抱きしめたまま、右手で手招きをする 「春香、おいで」 すると膨れていた春香がちょこちょこと近づいてきた 閣下が空けたスペースに、春香がすっぽりと収まる 私は春香の頭を優しく撫でた 「ただいま、春香」 猫のように目を伏せながら、気持ち良さそうに撫でられる春香 しばらく撫でられた後、私の手を取って顔を近づけてきた 私の頬にキスをした後、満面の笑みで一言 「おかえり、千早ちゃん!」 やっぱり春香には敵わない 閣下と二人、目を合わせて笑う 「春香、私お腹すいちゃった」 「うん。お夕飯出来てるよ。閣下ちゃんと作ったんだ」 「えぇ。今日のは私の自信作だから、きっと満足するわよ千早」 「ふふっ。それは楽しみだわ」 お父さん、お母さん 私は大切な人と3人で、幸せな毎日を過ごしています そんなことを想いながら、私は二人と手を繋いで、リビングへと向かった END