『メガネでお下げで、おいしそうな女の子』 「二人とも、もう一回通しで練習いくわよ」 「えぇ〜亜美もう疲れたよ〜」 「真美もー」 「後一回だから、二人ともしっかりしなさい」 ここは都内某所のレッスン場。三人のアイドルがダンスの練習をしている。 真ん中前方に律子、後ろ側二人が亜美と真美という組み合わせだ。 今は新曲のきゅんっ!ヴァンパイアガールのリリースに向けた練習中だ。 午後ずっと練習を続けているせいもあり、亜美にも真美にも疲労の色が見える。 不満はそんな状況から出たものだろう。 その日は本番を想定して、とのことで衣装とアクセサリーを借りて練習を行っていた。 曲のイメージに合わせて、アクセサリは吸血鬼をイメージしたものになっているのだが (二人の牙のアクセサリ、ずいぶんと出来がいいわね) 律子は鏡越しに後ろの二人の姿を見ながらそう思っていた。作り物の牙にしては光沢、質感共に まるで本物の牙のようであり、自分がつけている作り物の安っぽい牙と大違いだ。 (私にもあんなのが欲しかったわ) それに雰囲気がいつもとまるで違う。妖艶というか、じっと見ていたら吸い込まれてしまいそうな雰囲気。 二人はこの一年で身体的にもずいぶん成長しているが、そのせいなのだろうか。 (って、私も集中しないといけないわね) 思わず心のなかでぼやいてしまう。 ただ何故自分のだけ安っぽいのか、それだけが気がかりだった。 「ねぇ、律っちゃーん、亜美喉がカラカラだよぉ」 その日最後の練習を終えると、すぐさま亜美が声を上げる。 「確かに私も喉が乾いたわね、ちょっと飲み物買ってくるわ」 「そうじゃなくてぇ」 亜美が後ろから律子に抱きつく。 「ちょっ、亜美ふざけるのはやめなさい!」 「ふざけてないもん」 律子がふりほどこうとしても、亜美は離れない。 がっちり身体を捕まれ、動くことすらできなかった。 「あ、亜美…?」 「亜美はね、律っちゃんの血が飲みたいんだよ、美味しそうなんだもん」 「なっ、何言ってるのよ…」 耳元で囁くような亜美の声。ぞくり、と律子の背筋が震える。 「亜美たち、実は人間じゃないんだ、吸血鬼なんだよ、ほら」 口を開けると、さっきの牙が顔を出す。その牙は亜美の口の中から生えているのがしっかり見える。 …牙はアクセサリーなどではなく、本物だったのだ。 「信じられない…でもまさか、二人が最近急に大きくなったのって」 「うん、亜美たち人間じゃないからだよ」 信じられないが、筋は通っている、気がする。雰囲気に吸い込まれそうだったのも、そのせい? いや、やっぱり何が何やらさっぱりわからない。 「そんな事よりぃ、早く飲ませて、律ちゃん」 亜美の唇が首に近づいてくる。今はとにかく逃げなければ、と思っていても 亜美に強く抱きつかれ、離れることができない。 「駄目だよ亜美!事務所のみんなには手を出さないって決めたっしょ!」 今にも律子に襲いかかりそうな亜美の様子に真美は困ったような顔をしている。 「でもぉ、目の前で踊ってる律っちゃんすごく美味しそうで我慢できないんだもん」 負けじと反論する亜美。 「それに真美だって、ほんとは律っちゃんの吸いたいんでしょ?隠したってわかるもん」 「そっ…それとこれとは話が別…だよぉ」 本音を言い当てられ、真美が言葉を濁す。 「ふ、二人とも…」 「そういうわけだから、律っちゃん」 亜美の口が肌から数センチのところまで迫る。欲しくてたまらなかった律子の血が ついに飲めるからだろう、亜美の息は少し荒く興奮しているのが伺える。 「やっ…やめて…亜美」 普段とは違い、か細く震えた声しか出せない律子。 「怖がる律っちゃん、かわいい。はむっ」 そんな懇願をも楽しみながら、亜美は律子の首筋を狙い、牙を突き立てる。 「んはあっ」 刺すような痛みが走る。 「い、痛い…」 「んくっ、んくっ、じゅるっ」 亜美が喉を鳴らして血を吸い上げ始める。 「やめ、てぇ…」 恍惚の表情を見せながら律子の血を堪能する亜美。 しかし、亜美の経験がないせいか、あるいは律子が抵抗したせいか。 噛み付いた場所からつう、と血が垂れていく。真っ赤な血が流れ出す。 「律っちゃんの血…真っ赤…美味しそう…」 肩から垂れる赤々とした血を見た真美の声色が変わった。 「ま、真美…?」 「だめ…だめだけどぉ…やっぱり真美も欲しいよぉ」 真美がゆっくり近づいてくる。 「い、いやぁ…真美…ダメ…お願い」 両肩に手をかけられる。真美の目線は亜美が口をつけている側と反対の肩に向いている。 「ごめんね、ごめんね律っちゃん」 謝りながら、ゆっくりと真美は律子の肩に口付けする。 唇の柔らかい感触が触れた後、再び刺すような痛みが走る。 「ふああっ!」 反対側の方にも噛み付かれた。 「こくっ、こくっ」 あくまで血を吸うことに抵抗があるのか、真美の吸い方は控えめだ。 それでも、欲しかった血の味は真美にとっても極上の味だったのだろう。 惜しむように、それでいて堪能するように、じっくりと血を吸っている。 「ん…んくっ」 「亜美…真美…」 双子の吸血鬼に前後から挟まれ、律子はしばし血を吸われ続けた。 「はあ…はあ…」 ようやく解放された律子は息も絶え絶えだった。 「メッチャおいしかったよ、律っちゃん」 心ゆくまで堪能した亜美。 「真美もぉ…これ病み付きになっちゃうよぉ」 なし崩し的に血を吸ってしまった真美も今は満足そうだ。 「はあっ…二人とも…駄…目…」 律子の視界が真っ暗になる。激しい運動の後で血を奪われ、気絶してしまったようだ。 「「律っちゃん!」」 二人に体を預けるように崩れ落ちる律子。慌てて受け止める二人。 「どうしよ…真美たちのせいで律っちゃんが…」 「ちょっと吸い過ぎちゃったかな?でも美味しかった…」 「真美も…また吸いたいよぉ」 罪悪感を感じながらもうっとりとした表情の二人、さっきまで堪能していた味を思い出しているようだ。 「怖がってる律ちゃんも可愛かったね」 「血を吸われてる時の顔はちょっとエロいっぽかったよ」 「えぇ〜、亜美もちゃんと見たかったー」 思い思いの感想をぶつけ合う二人。 「じゃあさ、また律っちゃんの血、もらおっか」 「うん、元気になったらまた飲ませてもらおうね」 律子の顔を見つめ、二人はそう言って妖しげに笑いあった。 ------------------------------------------------------------------------------------ 双子に同時に血を吸われるのって良さそうと思い書いてみました。 吸血鬼ネタの妄想は誰が誰の血をどんなシチュで吸うのか妄想するのが楽しいです。 血を吸われた律子さんが乱れる所とかも書けたらなぁ…とも思ったり。 駄文ですが読んでいただきありがとうございました。