「コレ、なんだと思いマス?」 差出した写真に写る二人の人物を認識した瞬間、血の気が引くのが分かる。 「そ、それを何処で!?」 ・・・・・・『それを何処で』それはつまり・・・・・・。 「心当たりがアルんですね?」 「あっ・・・・・・」 墓穴を掘ったことに気がついたようだが、もうおそい。 「ちょっとしたジョークのつもりだったんですケドねぇ」 よくみれば距離感も影もでたらめの粗悪な合成写真 「・・・・・・絵理ももう一端のアイドルなんだから、そういう悪質n「それを何処でって、変デスよね?」」 いまさら良識ぶっても無駄。 「まるでこれの存在自体は不思議じゃナイみたいな言い方デスよ?」 青ざめて、少し震えながら、唇を噛むなんて 「そ、それは・・・・・・」 なんて可愛らしい人だろう。 「そういえば、あたしチョットお願いがあるんですよ」 「・・・・・・!?」 わざとにこやかに微笑いかけながら、気軽に話しかけてみる。 息をのむのは、お願いのせい?顔が近いせい?気になるけどそれは後でいい。 「聞いてくれないと、ナニかあるわけではないんデスが、きいてもらえるとうれしいですね」 「な、何かしら?私にできる範囲のことならいいんだけど」 至近距離で睨んでくるなんて、しかも目尻に少しだけ涙が見える。愛おしすぎる。 「そんな、大した事じゃナイですよ?」 キ ス し て く だ さ い 「センパイにしたみたいに私にしなさい」 「そ、そんなこと・・・・・・」 片手に写真をひらひらと振ってあげる。 「キスだけでいいの、こんな写真でそれ以上を求めないから」 「す、鈴木さん、キャラが崩れてるわよ?」 ああ、鈴木っていうなー、といって欲しいのね?何時もみたいに。 でもダーメ。貴女は混乱して、涙目になってるのが可愛いんだから。 「彩音」 「え?」 「鈴木じゃなくて彩音って呼んで、センパイの前以外では」 「え?・・・・・・ええ?」 「私も貴女のこと玲子って呼ぶから」 眼を覗き込むように見ながら囁く。見る間に顔を赤らめる。 「だ、駄目よ、こんなこと」 「・・・・・・ダメ?」 抵抗するんだ、かわいい。じゃあ、いじめてあげよう。 「キスするのが?名前で呼ぶのが?」 「き、キスするのに決まってるじゃない」 「じゃ、名前はいいんだ?ねぇ、呼んでみて私のこと」 これ見よがしに写真を振る。こんな粗悪品じゃ意味なんてないのに純粋ね。 「え・・・・・・あ、ゃ・・・」 「聞こえない、もっと大きな声で呼んで玲子」 玲子、というとビクリと肩が震える。顔はさらに紅くなっている。 「あ、やね・・・」 「玲子、もっと呼んで」 「あやね、あやねぇ」 「玲子、玲子」 「彩音・・・」 「玲子、キスして・・・」 どこまでも自然な動作で唇をよせる。 触れ合わせて体温を浅く確かめて終わり。 すぐに離れて行ってしまう、ぬくもりを追って捕まえる。 驚愕に作られた間隙をこじ開ける。 濡れた音が漏れて、苦しげな息を漏らす。その息も愛しくて啜り上げる。 二人を繋ぐ唾液の橋が切れる。 玲子がこれ以上なく、上気して顔は紅くとけている。 ああ、この顔が、今からどういう風に・・・・・・ 「玲子、その後ろの観葉植物、真ん中の葉をどけてみて?」 もう言葉を疑う余力がないのか、言われるままに動く玲子。 そして彼女は見つける、明らかに稼働中の小型カメラを。 さぁ、早く振り返って私にみせて、私のモノになった貴女の貌を・・・・・・。