「思ったんだけどね」 「ん、なに?」 「ミキと春香って、なんかスッゴく似た者どうしだな、って」 「えぇ〜? わたしと美希が? うれしいけど、そんなこと考えたことないなー」 「そう?」 「だって…何やってもすごい美希と違って、わたしなんか『特徴のないのが特徴』って感じのフッツーの女の子だもん」 「うん、そうだね。…やっぱり、春香とミキじゃ全然、似ても似つかないの」 「あ、あれ? そ、そんな急にコロッと意見変えなくてもいいんじゃない? 簡単に流されるのは感心しないな?」 「でも、春香の言うことももっともだと思うし」 「いやさっきのはなんというか、春香さん一流の謙遜でね?」 「ホントのことを言うのはケンソンになってないと思うの」 「うぇー! そ、それでもこう、『そんなことないよ』みたいな台詞の出る流れだったよね?」 「ミキ、そーゆーのに流されたくないの」 「カッコイイこと言わなくていいからなんか褒めてよ!」 「うーん…カワイイとか?」 「おお!」 「でもミキの方がカワイイしスタイルいいしセンスいいし歌もダンスも……」 「そこ自己主張しなくていいじゃん! そこは比べずに譲ってよ!」 「アイドルとしてそこは譲れないの。悔しかったら春香……努力あるのみ、なの」 「努力したくないの! 今褒めてほしいの! あ、そうだ、お菓子作りとかは?」 「あ、じゃあそれで」 「妥協しないでよ!」 「自分から言っといて…めんどくさい女なの」 「うーん……」 「ほら、ほら」 「あんまり思いつかないかな」 「ああん、美希がいじめるー!」 「もう、泣かないの。あ、でもひとつだけ、春香にどうしてもかなわないなって思うこと、あるよ」 「えっ! なになに、教えて!?」 「キスなの」 「はあ。え、キス?」 「あれ、リアクション薄いね。ミキ的にはすごいと思うんだけど」 「いやあ、反応に困るでしょ、キスくらい誰でもできるし。ほかに凄いことないの?」 「キスでおもらしさせられるなんて聞いたことないの! 春香はそこのところ自覚したほうがいいと思うよ」 「美希の我慢弱いのをわたしのせいにしないでよ。いつもいつもちゃんとトイレ行かないからでしょ?」 「ふーん、そういうこと言うんだ。……じゃあ春香、今日はもうミキ、トイレ行ってきたんだけど」 「は、はあ」 「春香のテクが凄いってこと、今日も見せてほしいな?」 「い…いや、わたしのいいとこ述べよって話だったでしょ!? キス以外で!」 「う〜ん、やっぱ思いつかないの」 「ひ、ひどいっ」 「じゃあ、イジワルしたお詫びに……ミキのおくち、春香の好きなようにイジメていいよ?」 「お詫びって、いやそれ、言ってることが全然変わってないっていうか…」 「…あのね、ミキね、今日も春香に、とろけさせてほしいの……」 「う…いや、その、まだ今、真っ昼間だし……」 「ね、あ〜ん」 「え〜と、えっと……。…い、いただきます……」 春香は、ミキの肩に手をかけると、ゆっくりゆっくり、だんだん顔を赤くしながら、近づいてくる。 つばを飲み込む音。鼻息があたる。 もうくちびるとくちびるが、ぶつかりそう。 ぶつかる直前、ゆっくり目をあけると、ちょうど春香と目があった。 瞳。 ああ、やっぱり。 ミキと春香は、そっくりなの。 こんなに近くても、はっきりわかるよ? きっと2人は、鏡で映したみたいにおんなじカオ。 もうしばらく、春香の顔見ていたいけど、もうそんな余裕、なさそうかな。 …ちゅっ―― くちびるが触れ合った瞬間、からだごとぎゅっと抱きしめられて、はるかがみきのなかにはいってきた。 …後のことは、目が覚めてからかんがえることにするの…… 夏の終わりの、ずいぶんとうるさいくちづけに、ミキの心はだんだんととろけていった。