真美が眼を覚ますと、部屋の窓から月明りが差し込んでいました。  カーテンは閉めたはずなのにどうしてだろうと、ベッドから体を起こすと、横から不意に声がかかります。   「真美、起こしてしまいましたか」 「うぇ!? あれ、お姫ちんも起きてたの?」  横で眠っていたはずの貴音が、真美の顔を見つめていました。  月に照らされている貴音は、本当に隣に寝ているのでしょうか。  実は想像の中だけのお姫様なのかもしれない、そんな非現実的な事が頭に浮かんでしまう程に綺麗に見えます。 「なんか、明るいから目が覚めちゃった」 「すみません。少し月を眺めにベランダへ出ようかと考えたのですが、体を動かすと二人を起こしてしまいそうで」 「それならカーテン閉めなくていいや。その代わり、真美もお姫ちんと月見するぜーい」  真美はそう言うと、貴音の体に腕を回して体を寄せました。  にっこりと笑顔を浮かべる真美を見ていると、夜中に起こしてしまった事への申し訳ない気持ちよりも、嬉しい気持ちの方が上回ってしまいます。  貴音は真美の笑顔に微笑みを返し、指で真美の髪の毛をゆっくり撫でました。   「んっふ……。真美ね、お姫ちんに撫でられるの好きだよ」 「喜んで頂けるなら、もっと続けましょうか」 「よろしく頼みますぞ、お姫ちん殿」  貴音は真美の言葉に頷くと、手を再び動かし始めます。  さらさらとした髪の感触を楽しむ貴音。  撫でられるくすぐったさに身を委ねる真美。  二人はベッドの中で、静かに月見の一時を楽しんでいました。