律子さん、まだ起きてますか? ごめんなさい、こんな時間に。 今日のこと、謝っておこうと思って。 どうしても外せない用事があったから、律子さんに美味しいご飯作ってあげられなくて本当にごめんなさい。 いいえ、気にします。 だって律子さん、いつも私の晩御飯楽しみにしてくれてたんですから。 作り置きも考えたんですけど、律子さんにはやっぱり作りたてのお料理食べてもらいたかったから。 でも安心してください、明日からはちゃんと作りますからね。 別に、律子さんのこと嫌いになったとかそういう訳じゃないですからね? 本当ですよ……? どっちかっていうと……あはは、いいえ、なんでもないです。 何も言ってませんよ。 本当になんでもないですから。 あっそうだ、お昼のお弁当はどうでした? いつもと味付けを変えてみたんですけど。 …………そうですか、よかったぁ。 お口に合わなかったらどうしようって思ってたんですけど、これで一安心です。 もう、そんなの気にしなくていいですよ!  律子さんは私のプロデューサーさんなんですから、ね? 料理とか洗濯とか、私の取り柄ってそれくらいしかないですし。 それに、律子さんはいつも私の料理を美味しそうに食べてくれるんですもの。 私だって頑張っちゃいますよ! ところで律子さん……さっき、洗濯しようとして見つけたんですけど、このハンカチ、律子さんのじゃないですよね? 誰のですか? あっ、分かった!あずささんのハンカチでしょ!匂いで分かるもん。 それで、どうして律子さんが持ってるんですか? えっ!?律子さん怪我したんですか!? その時に借りたって……怪我は大丈夫なんですか!? ……そっか、たいした事無くてよかった。 あのハンカチについてた血、律子さんのだったんだ。 ……ちょっと勿体無いことしたな。 こんなことなら、血の付いたところだけ切り取ってから捨てればよかった。 あ、ううん、なんでもないですよ!ただの独り言ですから……。 そういえば、最近律子さん帰りが遅いですよね。 会議室で特別レッスン? ああ……あの普通そうなリボンの人でしょ? 知ってます。 でも、あの人普通っていうより腹黒いですよね! あんな人と話してたら、律子さんまで腹黒い性格になっちゃいますよ。 律子さん、昔は私の話ちゃんと聞いてくれてたのに……最近はあんまり聞いてくれませんね。 それに、最近私ともあまり遊んでくれませんし、事務所に行くのもあずささんと一緒に行くって言うし。 …………あんな人!!どうせ律子さんのこと何も分かってないんだから!! 律子さんのことを世界で一番よく分かってるのは私なの!他の誰でもない、この私! あ……ごめんなさい、怒鳴っちゃって。 律子さんがそういうところで鈍いのは昔からですもんね、分かってますよ。 それはそうと、今日の晩御飯、どうしたんですか? そっか、外食したんですか。 お金渡しとけばよかったですね。 それで、一人でご飯食べたんですか? ふぅん……一人で食べにいったんですか。 …………やっぱりあの女の匂いがする。 律子さんの嘘つき!! ねぇ、どうしてそんな嘘つくの? 律子さん、私に嘘ついた事なんて無かったのに!! そっかぁ、やっぱりあずささんの所に行ってたんだ。 ……へぇ、手料理食べさせてもらったの? それは良かったねっ!! 律子さんは優しくてかっこよくて……でも、ちょっと雰囲気に流されやすいところがあるのは分かってた。 でも、律子さんはきっといつか絶対私の気持ちを分かってくれるって思ってたから、ずっと我慢してたんですよ!? それなのに、私に隠れて浮気ってどういうことですか!?信じられない! やっぱりあの女がいけないんですね。 愛人B(笑)とか言って律子さんに擦り寄ってくるけど、結局は赤の他人じゃないですか! あんな奴に律子さんは渡さない……渡すもんですか! たとえ幽霊になって出てきても、また始末すればいいですもんね。 どういう意味って、そのままの意味に決まってるじゃないですか! 律子さんに擦り寄ってくる意地汚い女どもは、みんなもうこの世に居ませんよ。 ほら、私の手を嗅いでください? ちゃんと綺麗にしてきたから、あいつらの匂いぜんぜんしないでしょ? はい、そうですよ。 今日律子さんの晩御飯を作れなかったのは、邪魔な女を片付けてきたからです。 だって、律子さんにはあんなのいらないもん。 律子さんの傍にあんなのがいたら、律子さんが腐っちゃいます。 律子さんのことを守れるのは私だけ……律子さんは私だけ見てればいいんですよ。 それが最高の幸せなんですから………… 『で、後処理はちゃんとしたの? あんたのことだからまた穴掘って埋めただけでしょ。まったく、世話が焼けるんだから』