「布団の中が、雪歩の匂いで一杯だ」 「いやいやいや、これ石鹸の匂いだよぅ」  照明が消えると、窓から差し込む星の光とほんの少しだけの街の灯りだけが、私達をうっすらと照らしていた。  ここは真ちゃんの部屋。私は今、布団の中で彼女と一緒に寝そべっている。お風呂上がりの二人が一つの布団に入っているから、とてもポカポカと暖かい。真ちゃんと目が合った事を確認して、私はそっと彼女の唇に触れた。  触れるだけで、顔が緩んでしまいそう。顔を離して、お互いニコリと笑い合って一呼吸。 「雪歩の唇って柔らかいね」  真ちゃんはそう言うと、私に顔を近づける。目を閉じて、彼女のキスに備える。  ちゅ、ちゅ。  私自身、唇が柔らかいと自覚した事ない。  ただ、真ちゃんの唇はクリームのようにふんわりしていて、柔らかいと思う。  つまり。 「真ちゃんのも柔らかいよ」 「そうかな?」 「うん。お互い様だね」  二人ともに、柔らかいという事。啄ばんだり、くっつけあったり、偶にはほっぺを狙ったり。  真ちゃんの体温が伝わってくる気がして、とても好き。 ――  互いに好きだという事がわかってから、オフ前日はどちらかの家に泊まるようになった。仕事で遅れがちになる学校の勉強を教え合ったり、テレビを一緒に見たり、漫画を読んだり……。同じ布団の中で寝るのも、泊まる時の恒例行事。 「ボク、こういう趣味持ってる自覚無かったんだよね」  ある日真ちゃんがこう言って、私も無いよと返した時の驚いた顔はとても面白かった。  私は男の人が苦手だから、男の人が嫌い女の子が好き、という訳ではない。  今も苦手を克服しようと、奮闘努力の日々を送っている。  真ちゃんが、男の子みたいにかっこいいから好きになった? それも違う。  ただ、真ちゃんとずっと一緒にいたい。  たったそれだけ。